記録をつけるということ(問題行動)
今回は、ひさ吉のCB(Challenging Behavior)についての以前の実践を書いてみようと思います。
CBとは、いわゆる問題行動です。
私は、ことばにはそんなにこだわりを持っていませんが、これらの行動は本人の側に問題があるのではなく、本人と環境との間にあるDysfunction(訳:機能障害、機能不全)による、とする立場から、CBということばを用いることにします。
昨年の4月、引越しをしてこちらの特別支援学校に転入しました。4月ごろは、「なんとなく」取り立てて問題も無く過ごしていたようだったのですが、5月の半ばごろから学校で近くにいる生徒さんに噛みついたり、つかみかかったり、というCBが見られるようになったと先生から伺いました。
実は今までにも同様のことがあり、出ては消えるということを繰り返してきていました。
このような場合、大抵は「『突然』『何もしてないのに』そのような行動をとる」という報告を受けることが多く、今回もそうでした。
ただこれは、実際には、「思い当たる原因が見つからない」というのが本当のところだと思います。
つまり、誰かにたたかれたとか、おもちゃを取られた、というような誰が見ても「わかる」理由が見当たらなかっただけのことで、
それがたとえ一般的には受け入れられないことでも、本人にとって「そうしなければならない」程の理由があるんです。
ただ、だからといって、このように他人に迷惑をかけるようなCBは認められるべきことではありませんので、対応を考えなければなりません。
このときのひさ吉の場合、家庭ではまったくそのような行動は見られず、学校でも四六時中そのような行動を起こしているわけではないので、
何かきっかけなり、起こりやすい状況なりがあるはずであり、その状況を把握したくて、担任の先生にお願いして、このようなシートの記入をお願いしました。
「CB0.xls」をダウンロード(Excelファイル)
or
「CB0.pdf」をダウンロード (pdfファイル)
ただ「記入をお願いします。」といっても、何を書いてよいかわからないと思われるので、はじめの1、2回は、担任の先生が連絡帳に報告してくださった内容を私がこの表に書き写し、次からそれを参考に書いていただくことにしました。
そして、記入いただいた結果はこちらです。
「CB200705-07.xls」をダウンロード (Excelファイル)
or
「CB200705-07.pdf」をダウンロード (pdfファイル)
このシートにおいて、
「①状況」はその該当するCBを「起こりやすくしている(であろう)こと」、「②先行事象」は、そのCBが「起こる直接的なきっかけ」を記入するのですが、
それを探るためにこのシートを記録するのであり、はじめからそれがわかっていれば苦労しないわけで、明確に「これだ!」とわかる場合もあるでしょうが、当たっていなくてもいいので「これかもしれない」ということを記入していただくようお願いしました。
また、わからない場合は空欄でもよいとお伝えしました。
このシートは、毎日親と先生の間でやりとりする連絡帳にはさませていただいていたので、親が後から朝出掛けるときの様子など、思い当たることを空欄に埋めたりもしました。
このシートに記録しながら、いくつかのことがわかってきました。
ただし、以下の内容は、シートに記録していただいたことから直接的にわかったものもありますが、記録していく中で本人に注目していただいたことで気づいてていったことも含まれます。
<わかってきたこと>
1.CBが起こる前には、本人が「CBが起こりそうな状態」になっている。
ひさ吉のクラスの担当の先生は、その状態は「顔つき」で大体わかるようになったとのことです。
ここで、「CBが起こりそうな状態」とは、すぐにCBを起こすわけではないが、何かきっかけがあれば、CBを起こす状態とします。
2.CBを起こそうとして(つかみかかろうとしたり、かみつこうとして)、妨げられると、繰り返しやろうとする。
3.「状況」「先行事象」については、共通項が見出しにくく、
周りのざわつきや奇声などの音が関わっているのでは、ぐらいの感じである。
そして、以下のような対応を家と学校で行いました。
<対応>
①「CBが起こりそうな状態」になる原因のいくつかは(全部は特定できなかった)、
a.「朝スクールバスの中でトイレを我慢していた」「朝、母親に怒られた」など。
b.学校での日課が、いつもと違ったり、本人が(勝手に)思っていたのと違った。
が考えられ、それぞれ取り除くようにした。
a.朝、出掛ける前の問題は、
「出掛ける前にトイレに行かせる」
「朝、怒らなくてもすむように配慮する」
(支度は、早めに声を掛け、朝食はタイマーで区切ってダラダラ食べさせないなど)
を家で行う。
b.一日の予定を、本人にわかりやすく説明していただいた。
(学校でのことで細かくはわかりませんが、写真やカードを使っているようです。
ただ、現状はまだ本人は完全にはわかっていないと思います。)
②「CBが起こりそうな状態」を、CBに至る前に、できるだけ鎮める。
a.手遊び「一本橋コチョコチョ~」を本人が要求してきたら、受け入れてやってもらう。
(本人が不安定なとき、これをやってもらうと落ち着くということが過去にあったため)
b.水筒のお茶を飲んで、一息入れる。
③「CBが起こりそうな状態」では、次のことに気をつけていただいた。
a.余分な声掛け(否定的な声掛けを含む)はしない。
b.声掛けするときは肯定的に、本人に共感するようにしていただいた。
(ex.「大丈夫だよ。」「○○したいよね」など)
④一度、CBを行おうとして妨げられると、できるまで繰り返しやろうとするので、
早めに対象となる相手がいないところに移動してもらうようにした。
⑤本人が要求を出せる場面を設定していただいた。
これは、直接的にこのシートの記録から読み取れるものではないのですが、
学校生活において、指示だけを受けて行動するだけでなく、
(学校生活では、指示通りに動けていればOKというようなところがある)
「~したい」という場面を作ることで、要求を伝えることを覚え、
本人が不安定になる要素を少なくしようという考えから、
学校生活の中で可能な範囲で、休み時間に遊ぶ遊具の選択など、本人に写真カードから選ばせるようにしてくださいました。
(その後、「遊びを終わりたい」、「ブランコ押して」、など本人からの自発的な要求がいくらか出るようになりました。)
その後なんですが、このシートに記入された、7月9日以降、ほとんどCBは起こりませんでした。
本来は、このようなシートに記録された内容等から、「CBが起こるきっかけとなる事柄(先行子)」「より起きやすくしている条件(EO)」「どうしてそのような行動が維持されているのか(CBが持つ機能※)」をきちんと特定し、それらから判断して適当と思われる対応を考えて実施し、その結果から方法が効果的であるかを確認すべきなのだろうと思います。
しかし、今回の場合これだけの記録からそれらすべて明確に特定することはできませんでした。いくらかは記録から特定される原因について消去し、いくらかは推測できる原因についてできそうなことからやっていった、という感じです。したがって、本当にすべての方法が有効であったかは不明確です。
また、「対応」に関しても、具体性に欠けるものもあり、現在のクラスの担当の先生以外の先生が同じようにできるか、という点でも難しいところがあると思います。
(そこら辺がきっちりできていたら、私はこのタイトルを「問題行動」にしたでしょう。「記録を・・・」としたのは、そのためです。)
ただ、親の立場から言えば、「今日はなんだか調子が悪かったですよ。」と報告を受けるよりは、どんな状況なのかをより具体的に知ることができ(時には、はっきりと情景が目んでしまうので、かえってつらくなることもありますが)、文字になった記録を読み返すことでより冷静に判断し、こちらの考えを伝えることができたのはよかったと思います。
例えば、実は私は当初、CBを行ったひさ吉を別の場所に移動させるのには、否定的でした。それは、場所を移動することにより「授業を受けさせない」ということを安易に行っていいものか、ということと、本人がCBを「回避」の手段として今後用いる可能性を否定できなかったからです。ところが、記録を見てみると、CBを妨げられるとそれをやりとげるまでやり続け、それによりどんどん本人が興奮して状態が悪化することがわかったので、他の場所に移動して本人を落ち着かせるほうがよい、考えることができました。
先生方には感想を伺っていないので、どのくらい意味があったかはわかりませんが、
少なくとも、「原因が何かある」という目でひさ吉の様子を見てくださった、ということと、
注意深く見てくださったことで「起こりやすそうな状態」がわかるようになったこと、
さらに、「起こりやすそうな状態」において、上に書いたようにでできるだけ注意を払ってその状態を鎮めるように対応してくださったり、十分に配慮して対応してくださるようにしたことで、CBが起こらなくなっていったといえると思います。
今回のことは、「CB(問題行動)」の対応としては不十分であったと思いますが、「記録をつけるということ」自体はCBの解決に十分意味があったと思っています。
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※CBの機能
CBのコミュニケーション機能は以下のようなものがある。
①「要求」:要求が断られたときにおこる。CBを消去できずに、要求に応じたり、
たまに応じてしまうことにより、維持される。
②「回避」:嫌悪刺激に対し、CBをすることによりこの刺激が除去できたとき、
その頻度が増加する。
③「注目」:本人の行動(CB)が他者の反応(叱責などの嫌悪刺激も含む)により、
強化、維持される。
④「感覚」:自己自身の反応による指摘によって、維持される。


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