これから発語することってある? その3 -12歳からの発語-
久しぶりの更新です。
4月に書いた「ひさ吉のコミュニケーション行動 2009」という記事において、わずかですが音声をコミュニケーションに使えるようになったということを書きました。
このデータを取った当時はまだ、母の“ことばで!”という無言の圧力(プロンプト?)によってことばを出していた感じですが、最近では、限られた場面ですが自発的にことばが出てくるようになりました。
まとまった記録については、例年通り3月ごろにとろうと思いますが、今のところ、「おかし」、「トイレ」、「(ジュースの蓋を)開けて」などは、本人から言ってきます。(発音は、母が何とかそれと聞き取れる程度のあいまいなものですが)
一般的に発語があった場合、「ことばが出てきた」という言い方をすることが多いと思います。つまり「知らないうちに」「勝手に」出てきたというニュアンスです。
「ことばの発達を促すためには」というようなことが語られるとき、よく言われるのは、「適切な言葉掛けをする」、「コミュニケーション意欲を高める」などを地道に続けていくことで、「ことばが出てくる」と言われていて(私が知らないだけで、もう少しテクニックのようなものもあるかもしれませんが。。。)、私自身もそのようなことに気をつけて日常生活を送っていくうちにことばが出てくるものだと思っていましたし、(それほど熱心ではないけど)そこそこやっているのにことばが出てこないので、大方諦めていたんです。
ところが、今回、以下の取り組みを行うことにより効果が認められたので、そのことについて書きたいと思います。
1.取り組みを行った当時のひさ吉の状態
まず、取り組みを始めたころのひさ吉の状態について書きます。
Ⅰ.音声模倣できる単音
単音で、音声模倣できる音は以下↓のとおりです。他に「ゃ」「ゅ」「ょ」の入る音(拗音)はすべて発音できません。
| ぱ | ば | だ | ざ | が | わ | ら | や | ま | は | な | た | さ | か | あ |
| ○ | ○ | × | × | ○ | ○ | × | × | × | × | ○ | ○ | × | ○ | ○ |
| ぴ | び | ぢ | じ | ぎ | り | み | ひ | に | ち | し | き | い | ||
| ○ | ○ | ○ | × | ○ | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ||
| ぷ | ぶ | づ | ず | ぐ | を | る | ゆ | む | ふ | ぬ | つ | す | く | う |
| ○ | ○ | × | × | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ |
| ぺ | べ | で | ぜ | げ | れ | め | へ | ね | て | せ | け | え | ||
| × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | ||
| ぽ | ぼ | ど | ぞ | ご | ん | ろ | よ | も | ほ | の | と | そ | こ | お |
| ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × | × | × | × | × | ○ | × | ○ | ○ |
×:模倣してその音に聞こえない音
いや、しかし、少なかったですねぇ。今でもそんなに変わってないですが。。。表にして○×をつけると、ちょっときついですね ![]()
まぁ、逆に、すぐにペラペラしゃべれるようにはならないということは容易に想像できますので、あんまり根を詰めないで、サイン・指差しなどのコミュニケーションの手段の一つとして、ある限られた場面で「ことば」が使えれば、ぐらいの感じで始めました。
Ⅱ.コミュニケーションのレパートリー
当時のひさ吉のコミュニケーションについては、以前の記事の記録(「com2009.pdf」をダウンロード)の「音声」の項目以外の部分とほぼ同等でした。(取り組みの直前の記録がないのが情けないですが、この取り組みを行ったのがこの記録をとるのほぼ同時期でした。)
この記録のように、さまざまな手段を用いて、いろいろな要求を伝えることができるようになってきていました。
2.取り組んだ内容
Ⅰ.手続き
① 「サイン」「指差し」などのコミュニケーション行動により要求してきたとき、
3秒待って本人が何も言わなければ、
該当する音声を母が発音し、模倣させる。
② 本人が、その音声に近い音を出したら、要求をかなえる。
(「近い音」とは、あまり厳密に考えず、それこそはじめのうちは、
なんでも発声したらOKぐらいの感じでやりました。)
これを具体的に「お菓子」の要求について書くと、
① お菓子の要求を指差しなどであらわしたとき
(ひさ吉は「お菓子の収納場所を指差す」ことにより要求する)、
3秒待って本人が何も言わなければ、
母が「お・か・し」といって、模倣させる。
② 本人が「お・か・し」または、それに近い音を出したら、お菓子を与える。
(「お・か・い」「お・あ・ひ」などもOK)
と、なります。
同様の取り組みを、「おかし」「(お菓子の袋を)あけて」「おかわり」「ふりかけ」について、取り組みました。
Ⅱ.結果
「おかし」「あけて」:
これはモチベーションが高かったのか、すぐに習得し、
自発的に言ってくるようになりました。
「おかわり」「ふりかけ」:
一度サインを出してから、”言わないの?”という感じで一瞬待つと、
発音しますが、自発的に言うには至っていません。
この結果おいて、
「おかし」「あけて」は、母がひさ吉に注目していないときに言うことが多いので、発声することにより母がひさ吉に注目するので、自発的に発音する行動が強化され、
「おかわり」「ふりかけ」については、食事中、母は目の前にいて、わざわざ声を出さなくても、ひさ吉に注目しているため、注意を引く必要がなく、サインで十分通じるため、自発的に発音するには至らない、
と思われます。
より便利で信頼性の高い方法に移行していくということなんでしょうね。
また、これが一番驚いたことなんですが、この<手続き>を行った時期を境に、↑の<手続き>によって取り組んだ以外のことば「おふろ(入る)」、「トイレ(行くよ)」、「パン(食べたい)」、などのことばを自発的に言うようになってきました。
これらのことばは、特に意識して取り組んだのではなく、本人がサインなどにより伝えてきたときに母が対応することばを発音する程度で、模倣させたりしていませんでしたが、コミュニケーション手段として習得していきました。
私としては、この取り組み以降も、このような<手続き>をそれぞれのことばについて、ひとつずつ取り組んでいかなければならないと思っていたので、勝手に(?)自発語が増えたのは、かなりの驚きでした。
これは、上記の<手続き>を行うことにより、「ことばを使ったコミュニケーション行動が強化された」ということになるんでしょうか。
3.今後の課題
今後の取り組みについては、
・ことばの種類を増やす
・発音をより明瞭にし、発音できる音を増やす
・しかし、「ことば」にはこだわらない
ことを中心にやっていこうと思います。
Ⅰ.ことばの種類を増やす
前項で述べたように、現状としては上述のような<手続き>をふまなくても、それぞれの場面で使うべきことばを示すことで習得する段階になっているようなので、こちらが把握できる要求について、それぞれに対応する「ことば」を母が発音するようにしていこう思っています。
Ⅱ.発音をより明瞭にし、発音できる音を増やす
現状、ひさ吉の発音は、わかる人にしかわからない程度のものなので、それをより聞き取りやすくしていきたいと思います。
これには、以前、ある言語聴覚士の方のブログでご紹介いただいた
「やさしい発音・発語指導」(上・中・下) 柳生浩 著
という本を使っています。聴覚障害者の方の発音・発語指導のために書かれた本のようですが、発音が不明瞭なひさ吉にとっては有用な本でした。各音が出せるようなるコツというか指導方法がやさしく書かれていて、すでにいくつかの音が出せるようになりました。
Ⅲ.しかし、「ことば」にはこだわらない
今後のコミュニケーション手段については、これまでにも言ってきたように、「ことば」などの一つの手段に限定せず、本人の能力やそれぞれの場面に応じて、本人が使いやすくて理解されやすい手段を選択していきたいです。
また、さまざまな本人の能力を上げていくことで、より使いやすくてより理解されやすい手段に移行していけるので、たとえば、書字・読字などについても、公文教室などを利用して取り組んでいます。
4.取り組みの効果
ここまで長々と書いてきてこう言うのもなんですが、「この取り組み自体、効果があるのか?」と聞かれたとき、100パーセント「あります。」とは答えられません。
それは、今回ひさ吉がこの取り組みで効果が出る状態にあったのだ思われるからです。
実は数年前に同様の取り組みを行ったことがあったのです。
しかし、当時は、とりあえず要求語としてひとつの「ことば」を習得すると、他の要求場面でも同じことばを使うようになってしまったのです。
つまり、「あけて」ということばを習得したら、お菓子を要求するときも「あけて」、トイレに行くときも「あけて」、といった具合です。
今から思うと、そのころは他のコミュニケーションのレパートリーもぜんぜん少なかったので、そういうことが関係しているのかもしれません。
このことからも、今回はこの取り組みが有効な段階にひさ吉があったということだけで、 だれでもこの方法で発語を促すことができるというものでもないと思います。
ただ今回について、残念ながら、細かい分析をして取り組みを始めたわけでなく、ひさ吉の状態から、なんとなく「そろそろこれやってみようかな。」と思ってはじめたので、「この状態だったらこの取り組みが有効」ということは言えないです。(ある程度は、「1.~ひさ吉の状態」で書いたようなことが根拠にはなっているのですが。)
まぁ、そういうことは、専門家にお任せして。。。![]()
「今回のこの取り組みが有効だったわけではなく『偶然』このタイミングでこの結果になったのではないか」といわれても否定する根拠もないです。。。
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コメント
(。・ω・)ノ゙ はじめまして♪
かりんと申しますm(_ _)m
今年度より養護学校で働いている、新米教師です。
現在担当している、小6の女の子に発語がありません。そんな彼女と円滑なコミュニケーションをとる為に模索する毎日です。
こちらのブログは、とても勉強になるので、最近時々読ませて貰ってます。これからもちょくちょく来ると思いますので、どうぞよろしくお願いします
投稿: かりん | 2009/09/21 20:44
かりんさん
コメントいただき、ありがとうございます

私は一母親で、自分の息子のことしかわからないし、ひさ吉のケースはただの一例に過ぎないのですが、これが世の中で稀なケースであっても、できるだけ丁寧に書くことで、ごくわずかでも共感してくださる方がいたらうれしいな、と思って何とか続けています。
ですから、こうしてコメントをいただけると、またがんばろうっと、モチベーションが上がります
かりんさんも、お仕事柄お勉強される機会も多いと思うので、またいろいろ教えていただけたらうれしいです。
投稿: ぴさまま | 2009/09/22 02:13